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幼稚園
お昼に園児たちが遊具をとりあって騒いでいる
そんななか一人、すみの砂場で遊ぶ男の子
彼は砂と水で見事な器を作っていた
「ねぇ」
そんな彼に一人の女の子が声をかける
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片手にぬいぐるみをもっている
「一緒におままごとしない?」
少年はしばらく考えたあと、こくんと小さくうなずいた
「なんで男の子入れるの?」
「あの子あんまり喋らない子でしょ」
「おままごとできるのかなー」
他の女の子がひそひそと話すが、彼女は「大丈夫!」と胸をはった
「だって、お皿作ってるもん
このお食事会に参加したいんだよ」
人形を持っておもちゃティーセットで遊んでいた女の子たちは固まった
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おもちゃのティーセットの隣に砂の器が置かれる
「なんか、急に和風に……」
とまどう女の子たちに、少女は焦って答える
「和洋折衷のお茶会なのよ!」
その足元は男の子の砂の器を踏みつぶしていた
「あっごめんなさい」
少女は少年が怒るか泣くかと思って身構えた
少年はへらと漆を取り出し、無言で金継ぎをはじめる
その姿は女の子たちにまぶしく見えた
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少女は失敗したかな?と考えた
おままごとは好きだけど、女子たちと遊ぶのが苦手だった
いつもいつもティーパーティー
たまには大食い大会とか、闇鍋とかするおままごとがあってもいいんじゃないの?
そう思って、男の子を引き入れた
でも、この男の子…ぜったい大食いしないタイプの男の子だ
片手をそえて、丁寧に食べる真似をする少年
女子たちは他の男子と違う男の子の雰囲気にポーっとしている
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少女はひとりその場から走り去る
少年は少女の悲しそうな表情を見て、ゆっくりと立ち上がった
彼女が猛スピードで戻ってくる
少年とぶつかりそうになって彼女が驚く
他の女子が教えてくれる
「あなたを追いかけようとしたのよ」
「遅すぎじゃない!?」
少女は机の上に拾ってきた雑多なものを並べる
ビーダマ、花、クローバー、リボン
「闇鍋大食いパーティーをするの」
「えー闇鍋?」
「大食いー?」
受け入れられなくてつらそうな少女を見て、少年は立ち上がった
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少女から雑多なものの山を受け取ると、キレイに分類して並べていく
実際にはしていないが手際よく下ごしらえをしていく姿が見えるようだった
女子たちは満足して闇鍋大食い大会を楽しんだ
少女はうれしそうな笑顔を浮かべた
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帰り道、少年がいないことに気づいた少女
まだ少年が丁寧に闇鍋を食べる仕草をしていておどろいた
その姿が美しくて、輝いて見えた
(ティーパーティーのおままごとも、悪くないかもしれないな…)