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雑貨屋でパンを盗もうとしている少年
店の入り口から、パンの棚までの歩数も数える
計画通りだ
しかし新しく入った店番のお姉さんに怒られる
少年は「なんでわかった?」と焦る
お姉さんは「顔に書いてあるよ」と笑う
少年は汗まみれで顔は引き攣っている
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「悪いことをしてるって、わかりやすすぎる」とお姉さんは笑う
「おどおどしながら店に入ってきて、ガチガチの状態で出て行こうとするんだから」
奥から店のおばちゃんが出てくる
お姉さんは少年のことを告げ口しなかった
「やるんならもっとうまくやるんだよ」
お姉さんは少年にこそっと耳打ちする
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翌日、今度はお姉さんにバレないように逆にニコニコしていたがバレた
怪しかったらしい
さらに翌日、表情が読み取れないようにマスクとサングラスをつけたがバレた
怪しかったらしい
毎日毎日、見つかっては没収される
お姉さんがこの店に来てからというもの、この店でパンが盗めなくなった
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店のおばちゃんが家に連絡して、少年のお母さんが迎えに来た
お母さんは店のおばちゃんにお金を渡し、涙を流して謝った
少年の表情を見て、お姉さんは嫌な予感がした
お母さんにいつもよりひどく叱咤されながら少年は思った
(もっと完璧に計画を遂行するには)
(どうすれば思っていることが顔に出ないようになる?)
心を無にして母からの暴力に耐えながら考える
(心を無にすれば、相手が覗いてきてもそこには何もない。悲しいことも、怖いことも全部ゼロに近づいていく)
盗みが失敗し、連日あまり食べられておらず、空腹が限界だった
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また雑貨屋に来た
お姉さんがいるが、今日は捕まらない
ガムテープやロープやカッターやライターを次々に懐に入れていく
心を無にしているので完璧なはずだった
でもお姉さんはつらそうな顔で出口に立ちはだかった
「君は気持ちがわかりやすすぎる。
毎日君の顔を見てたから、君が何考えているかわかるよ。
コロコロ面白いように表情が変わる君が」
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「何もないのに、そんな何もない顔ができるわけないでしょ」
その瞬間、少年は助けを求めるようにくしゃっと泣いた
少年がお姉さんと玄関のドアを開けると母親が駆け寄ってきた
母親が謝罪を口にしながら抱きつくと、少年の服からロープやカッターがこぼれた
「ヒッ」と後ずさる母親
少年は悲しみや怒りや安堵や恐怖が入り乱れ表情がぐちゃぐちゃになった
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近所の人や駆けつけた警察から少年の表情が見えないように、
お姉さんは少年を後ろから抱きしめた